2010年08月28日

「名揚四海」その3

今回も台湾ドラマの名作「名揚四海(Friends)」(2003年:オフィシャルサイトwikipediad-addicts.com)をご紹介。しつこくてすみません。「その1」はこちら、「その2」はこちらをどうぞ。

今回は、このドラマがなぜ「名作」なのか、他のドラマにはない特徴は何か、などについて書いておこうと思います。

ひとつの大きな特徴は、繰り返し書いていますが、このドラマが明確な主人公をもつストーリーというよりは、群像劇に近いという点です。そして、前回のエントリで紹介したように多くの登場人物がいる中で、登場人物同士の関係の複雑さを丁寧に描きつつ、その関係に時間の重み(少年少女次第に始まるものや、中にはそれぞれの出生時に由来するものまで)を持たせ、さらにそれぞれの人物の間に人生上で交差する場面がいくつも設けられているので、本当に奥行きのある物語になっています。これほど複雑な関係の交差を、破綻なくストーリーとして成り立たせているのは、台湾ドラマとしては本当に貴重な例なのでは?

あと、台湾社会の複雑さを単純化せずに巧みに描き出している点も、重要な点だと思います。ひとつは、都市と地方ということ。地方から台北に吸い寄せられるかのように集まってくる若者たちを描くわけですが、そのこと自体が地方に対する都会=台北の経済的・社会的な優越を示していて、そのことがはっきり描かれているのは、日本の少女漫画が原作のドラマがどうしても台湾社会固有の文脈から離れた物語になりがちなことを考えると、このドラマの大きな特徴ではないかと。地方の側から見た大都市・台北のイメージ(美麗と石頭が乗る毎朝の通勤電車とか、陳峰の自宅に照り込むネオンの光とか)と、それと対比されるかのような、田舎の空の広さ・海の青さなど、風景の鮮やかさや自然の豊かさの描写。実際、当時はまだ新幹線も開通していないので、地方と台北の間の距離感は今よりもはるかにあったでしょうし、だからこそ「台北に行く」ということは大きな決断だったのかもしれません(逆に言うと、新幹線ができた今、都市と地方の精神的な距離感が以前とどう変わったのか・変わっていないのかは、大変気になるところです)。都市と地方の話とは関係ないけど、台北101ができる前、台北の街を望む高い場所といえば、新光三越の屋上でした(現在はもう入れないようですが)。美麗と石頭が仕事の後にそこで待ち合わせて、美麗が石頭を待ち続けるというエピソードも、今の台湾の若者にはもうそれほどピンと来るものではなくなっているかもしれません。

台湾社会の複雑さに関わるもうひとつの点は、「原住民」(先住民族)の位置づけ。主役の陳峰とその妹の陳眞(小眞)を通して、都会に暮らすいまの原住民の姿を、彼ら/彼女らが置かれている困難な状況も含めて、かなりしっかり描いていること、そしてそれ以上に、原住民がちゃんとした役割を担ったドラマであるということは、大きな特徴でしょう。もちろん、ここに描かれている原住民の姿もやはりステレオタイプに過ぎないという批判もありうるとは思いますが、これだけちゃんと描いているものはなかなかないかも。小眞に至っては、さらに障害もあるという設定なので、一層複雑な立場にあります。それを見事に演じきって、小眞役のSAYAは賞をもらったわけですが(第38屆電視金鐘獎 連續劇女配角獎)。

こうした、物語の複雑さや台湾社会の複雑さを見据える、単純化されない視点が常に保たれていたことが、このドラマの魅力の源泉(の1つ)になっていたような気がします。それは脚本が優れていたというのが一番直接的なことですが、前のエントリにも書いたように、スタッフなど関わっている人たちが本当に真剣にこの作品に取り組んだ(と思われる)ことも、大きかったのではないかと勝手に思っています。

いやしかし、あれこれ書きましたが、本当にいい作品です。もうDVDも入手困難かもしれませんが、ぜひ機会があればご覧いただければと思います!

あと、どうしても「名揚四海」は見られないけど、近い感覚が得られる(かもしれない)作品としては、同じ蔡岳勳が「名揚四海」の直前に撮影した「流星雨 道明寺編」があります。後に「名揚四海」に展開する萌芽的なアイディアが、いくつも見つかる作品。これも機会があればぜひ。

というわけで、最後は「名揚四海」のエンディングテーマ、羅美玲の「愛一直閃亮」を。まず、実際にドラマのエンディングで流れたものを。


フルヴァージョンで聴きたい方は、MVのヴァージョンのこちらをどうぞ。当時赤い髪がトレードマークだった羅美玲は、この後シーンから一旦消えていましたが、数年前に音楽活動を再開しました。最近はどうしてるんだろう。


posted by 研究員B at 01:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月27日

「名揚四海」その2

前回のエントリ(「名揚四海」その1)に続き、今回も台湾ドラマの名作「名揚四海(Friends)」(2003年:オフィシャルサイトwikipediad-addicts.com)をご紹介。

とりあえず、やはりオープニングテーマ「彩虹」をまた貼ってしまおう。これがないと「名揚四海」は始まらない。ただ、昨日のものはドラマのオープニングの映像のものだったけど、今回は張心傑の「彩虹」のフルヴァージョンMVという仕上がり。ただし使われているのは、すべてドラマの中の映像なので、ダイジェストとして見ることも可能。


さて今回は、ドラマの登場人物の紹介を。というのも、前回のエントリに書いたとおり、このドラマは特定の一人の若者を取り上げるのではなく、6人の仲間それぞれを描く群像劇になっています。そのため、いわば6人主役がいるような感じなので、一人ひとりを丁寧に紹介してもいいかも、と思った次第。ちなみにオフィシャルサイトにもかなり詳しい登場人物の紹介があるので、中国語が読める方はそちらもどうぞ。

陳峰

このドラマの主役を一人挙げよ、といわれたら、この人でしょう。いわゆる「原住民」(先住民族)の彼は、燕如の母の指導でピアノの才能を認められていて、また恋仲だった燕如とは、10年経ったら二人で海に沈めた箱をもう一度取り出そうと約束していた。しかし、母親が殺される事件を機に、仲間と過ごした町を離れることに。ドラマの時点では、台北のビルの屋上に建てた、いい環境とはいえない部屋で暮らし、ピアノからも当時の仲間たちからも遠ざかっていた……。

演じるのは、ロックユニット「動力火車」のメンバーの尤秋興。ドラマ出演はこれが最初で最後。彼自身も先住民族(パイワン族)で、Pubの歌手から始めてメジャーシーンのアーティストに。「名揚四海」では、陰のある、複雑な背景をもつキャラクターを見事に演じる。

燕如

警察の父親と音楽教師の母親をもつ(しかし本当は出生の秘密が…)。病気の療養をしながら地元で過ごし、故郷の海に陳峰と沈めた箱を取り出す約束の日が徐々に近づいていることを思う。石頭は弟。弟思い。なんというか、典型的な病弱善人キャラ?

演じるのは婷婷(d-addicts.com)。このドラマ以降も芸能活動は続けているようですが、日本に放送されるドラマに出たりはしていない模様。なお、少女時代の燕如を演じたのは、当時まだデビューして1年ほど?の林依晨(アリエル・リン、日本語wikipedia)。アリエルの初期出演作品ということで、「名揚四海」を知ったという人もいるのでは?

POLO

政治家の母親を持つ楊寶樂ことPOLOは、30歳までに富を築くことを目指して、店を開いてはつぶすのを繰り返している。ドラマ中では、主にインターネットカフェを経営。友達思いのいい奴、という設定。陳真を支える。

演じるのは唐治平(タン・ジーピン、中文wikipedia日本語wikipedia)。その後ドラマ「求婚事務所」で主役を演じる。コンスタントにドラマ出演を続けていて、「花樣少年少女」「花ざかりの君たちへ」)では梅田先生という結構難しい役を演じたりもしている。

GiGi

淑枝=GiGiは、仲間の中でいち早く台北に出て、人気モデルとして成功。他の仲間からは、手の届かない別世界にいるように見られていたが……。交際相手のKen(聶雲)との関係はちょっと微妙。笑顔の裏に、複雑な思いと陰る表情が印象的。

演じるのは黃芝h(Grace Huang)。彼女は本物のモデルで、現在も活躍している模様。豪華なオフィシャルサイトFacebooktwitterもあり。台湾生まれだけど、6歳のときにシドニーに移住したとのこと。F4の"Ask for More"に出ていた女性といえば、わかる人もいるかも。

美麗

医者の卵。地元を離れ、台北の病院でインターンを始める。ドラマ全体の語り手(ナレーション)は彼女。石頭に思いを寄せる。活発で明朗。その裏で自分のつらさをかみしめることも。

演じるのは虞小卉。実は、このドラマの監督・蔡岳勳の妻。女優としての活動はこの作品を最後にやっていないのでは。製作側の重要な一人として、現在に至るまで蔡岳勳とともに仕事を続けている。「名揚四海」の脚本も、かなりの程度彼女が書いたと、どこかで見たような気がする。

石頭

燕如の弟。地元の仕事を濡れ衣の罪で首になり、(かねてから思いを寄せる)GiGiに少しでも近づければ、という思いもあって台北で働くことを決意。要領が悪く失敗もするが、性格の良さ(?)ゆえになぜか目をかけてもらったりして、じわじわ出世。GiGiと美麗の間で揺れる優柔不断さがあり、それゆえに美麗を傷つけてしまう結果に。

演じるのは修杰楷(シュウ・ジエカイ、中文wikipedia日本語wikipedia)。蔡監督にスカウトされ、このドラマでデビュー。その後も蔡監督の諸作品に出演し続けるとともに、さまざまな作品で「2番手枠」として姿を見るようになる。「惡作劇2吻」イタズラなKiss2)では船津役を演じています。

以上が主要な6人の若者ですが、これ以外にも陳峰の妹の陳真(SAYA)や美麗の同僚の医師・胖子(劉亮佐)、陳峰の元カノ・安h(蔡淑臻)など、重要なキャラクターが他にも目白押し。(個人的に一番お気に入りのキャラクターは、美麗の母親です(!))

改めてみると、後の作品で売れっ子になっていった人もいるけど、少なくともこのドラマの制作時点では、多くはまだまだ新人だったのではないかと思います。目玉になるキャスティングもない中で、よくここまでの作品を作ったと、改めて感心してしまいます。「ブラック&ホワイト」オフィシャルブログによると、修杰楷は
「もしもできることなら、僕はドラマ《名揚四海》を最初からもう一度撮影したい。あの頃僕たちがやり遂げられなかったことを補って、全てを完璧にしたい。感動をより遠くへ伝えたい。」
と語っているのとこと。こうした言葉からも、「名揚四海」は製作に関わった人たちにとっても思い入れのある作品なのではないか、と思ったり。

まだまだ書き足りない、ドラマ「名揚四海」。「その3」もやります!

posted by 研究員B at 01:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月26日

「名揚四海」その1

台湾に関するネタを、よくいえば幅広く、悪くいえば雑多に取り上げてきた当ブログ。しかし今なおまったく扱っていないジャンルがあります。それは…ドラマ! 今回のエントリは、「ドラマ」というカテゴリーの記念すべき最初のエントリになります。

いや、当研究所は決して、数多く放送されてきた台湾のドラマに一切無関心というわけではないのです。「食尚玩家」についてのエントリでもちらっと書いたとおり、以前は所長(現3歳)が寝入ってから、研究員2名で夕食をとりつつテレビ(ドラマも)をよく見ていました。しかし、所長が起きている間はテレビをつけないという所内ルールが導入され、そして所長が大きくなって一緒に食事をとるようになり、所長の寝る時間も遅くなってくると、なかなかテレビを見る時間がとれなくなってしまったのが実状。特にドラマのような連続ものは、事実上見られなくなっている状態。

というわけで、今回は、とりあえず所長着任前の、ずうっっと以前のドラマをご紹介。タイトルは、「名揚四海(Friends)」(2003年:オフィシャルサイトwikipediad-addicts.com)。この作品には、当研究所は結構思い入れがあるので、じっくり取り上げようと思います。

このドラマを見たのは、2003年から翌年にかけて、スカパー784ch(当時の名称は「楽楽チャイナ」)の放送でした。当時同チャンネルは台湾・東風衛視の番組を放送する枠があり、このドラマもそこで放送されていました。中国語チャンネルなので、中文字幕のみで日本語ゼロ。当時は初心者中の初心者だった研究員B、研究員Aの同時通訳(?)のおかげで見ることができました。結局その後現在に至るまで、このドラマは日本で放送されていません。

監督は蔡岳勳(d-addicts.com)。「流星花園」(台湾版「花より男子」)や「ザ・ホスピタル」などで、台湾ドラマの監督としては日本でも有名な一人。時期としては、この「名揚四海」は、「流星花園」の後、「戦神〜MARS〜」の前に作られたものです。

オープニングテーマは「彩虹」。このドラマに出演している尤秋興がメンバーであるユニット「動力火車」の歌ですが、ドラマのオープニングでは当時15歳の新人・張心傑のヴァージョンが使われていました。南部の青い海と空!



このドラマのオフィシャルページには、冒頭に次のような文章が書かれています。
像許多南部的年輕人一樣,
我們對台北這個城市也充滿了嚮往之情;
也許是因為迷惑於她表象的繁華,
也許是期望在更多更好的工作機會中一展身手,
或者,
也許只是單純地為了一圓兒時的夢想,
我們收拾了行囊,
告別親人與家鄉,
搭上列車,
置身於這個陌生又熟悉的都會之中......
「多くの南部の若者たちと同様に、私たちも台北という都市にあこがれの気持ちを抱いていた……私たちは荷物をまとめて、家族や故郷に別れを告げて、列車に乗って、未知であると同時に熟知しているこの都会に身を置く…」という感じ?(中国語初級レベルのためご容赦を) これに表れているように、このドラマは地方から都市=台北に出てきた若者たちの姿を描いたもの。特定の一人の若者にクローズアップするというのではなく、仲間だった6人(陳峰・燕如・POLO・美麗・GiGi・石頭)それぞれを描く群像劇になっています。

台湾南部で共に育った若者たちが、やがて故郷を離れて台北に移り、それぞれの生活を送っている。医者の卵、人気のモデル、ネットカフェの店長…。それぞれの別れと再会や、近づきすれ違う思い、彼ら・彼女らの成長と悲しみが描かれている……っていうと凡庸に響くかもしれないけど、その若者たちを軸にしつつ、親世代から続く複雑な経緯や過去の事件・約束、彼ら/彼女らを見つめる先輩や同僚・恋人たちとの関係も織り交ぜながら、とっても奥行きのある物語になっています。

今回、このエントリを書くにあたって、改めて「名揚四海」について検索すると、さすがに多くはヒットしないけれど、日本人でこのドラマを見た人のコメントは絶賛するものばかりのような気がする。「名作!絶対見るべし!!」とか、「感動、感動、感動の嵐!「名揚四海」についてなら、2,3時間は語れます」とか書かれているのが見つかります(!)。そう、この作品、冗談抜きに名作です! 音質の悪さをはじめ、いろんな限界や欠点はあると思うけど、いま考えても本当によく練られた、とてもおもしろい作品です。お勧めです。

実際、自分にとっても(おそらく研究員Aにとっても)、ほぼ最初に見た台湾ドラマだったにもかかわらず、本当にインパクトを受けた作品で、台湾ドラマや台湾社会への関心をぐいっと高めた作品です。可能性は限りなく低いのは承知の上で、日本語字幕での放送を希望!

続きはまた明日以降ということで、今回は最後に、台湾での放送開始時の見面會の様子を動画サイトでみつけたので、ご紹介。動力火車の尤秋興=陳峰が、ドラマの中と同様に、「媽媽的歌」を朗々と歌っている! これ、とっても貴重だと思う。



posted by 研究員B at 00:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする