2011年02月19日

「母語」を話して買い物しよう!

また今回も、ネタを求めてニュース動画をあれこれ物色(最近このパターンばっかりですね、すみません)。
今回見つけたのは、ここ数回に続いて、また「言葉」にまつわる話題です。

2月21日は、UNESCO(国連教育科学文化機関)が定めた「International Mother Language Day(国際母語デー)」なのだそうです。wikipediaによると、"to promote awareness of linguistic and cultural diversity and multilingualism"という趣旨の日とのこと。間もなく今年もその日がやってくるということで、これに関連した話題として紹介されていたのが、「0221世界母語日 母語聯盟倡打折」(公視/Yahoo!奇摩新聞)というニュース。映像はこちら:

公視晚間新聞「0221世界母語日 母語聯盟倡打折」


ここで紹介されているのは、「台灣母語聯盟」という組織がやろうとしている、「講台語,俗予你」というキャンペーン。どういうことかというと、「母語」を話して買い物をすると、割引やサービスなどの特典が受けられるというもの。ここで「母語」という言葉で意味されているのは、「原住民語、客語還有台語」つまり原住民(先住民族)の言葉・客家語・台湾語だそうです。

「International Mother Language Day」は2月21日なので、その週の週末の2月25日から3月3日までの一週間をキャンペーン期間として、「講台語,俗予你」と書かれたマークが貼ってある店では、期間中は「母語」で話をして買い物をすると特典が受けられるようです。こんなマークです↓

motherlanguage.jpg

台湾は多文化・多言語の社会です。そのことがMRTの車内アナウンスにも反映されていることは、以前当ブログでも紹介しましたが、こういうキャンペーンが行われることもあるんですね。

このキャンペーンを進めている「台灣母語聯盟」の人いわく、学校の授業で少しだけ「母語」を学ぶだけでは足りず、生活の中で母語を使うような環境をつくっていきたいとのこと。だからこういうキャンペーンに取り組んでいるのでしょうし、協力してくれる店がもっと増えてほしいとも述べています。

もちろん、こうした試みがなされることの背景には、台湾社会における言語をめぐる、複雑な文脈がいくつも重なっていることは留意しておくべきかもしれません(上の動画の中でも、昔だったら逆に罰せられることだったのにという言葉がみられます。またそもそも、「母語」を一つに限っているわけではないのに、キャンペーンでは「講“台語”」となっていることも気になります)。でも、小さな話題ですが、とても台湾らしさが感じられる話題のような気が。いかがでしょうか。

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2010年12月08日

台湾語・台湾華語の教材情報7 誠品信義書店語学書コーナー編

今年の夏に連載してびみょーに好評だった「台湾語・台湾華語の教材情報」シリーズ。前回出張時に誠品信義書店の語学書コーナーを覗いたので、その時、発見した本をいくつかご紹介。夏に集中連載した時のエントリについては、「きっかけ編」「台湾語教材編」「台湾華語教材編」「辞書編」「歴史資料編」「終わってみての雑感編」をご覧ください。

さて、誠品書店語学書コーナー。「台湾語・台湾華語の教材情報」シリーズでも散々書いたけど、日本で正統派中国語教育(=簡体字を用いた大陸中国語でのレッスン)を受けた研究員。台湾で使われてる中国語(=繁体字を用いた台湾華語)がいまだぴんと来ない。そんな研究員Aが少しでも「台湾華語」に慣れるため、役に立つ本はないかなーと店内をぐるり。混み混みの店内(この辺の事情はこちらのエントリをどうぞ)でけっこう苦戦したが、ある書棚にそれっぽい本がまとまってあるのを発見。立ち読みしただけだけど、「へー、こんな本が出てるんだ」という驚きを皆様と分かち合うために、ざっくり羅列してみます。

● 陳hh・王南傑 『兩岸用語快譯通』 大都會文化事業有限公司、2004年。

● 李剛 『兩岸日常用語一點通−中文繁體簡體完全對照』 出色文化、2009年。

● 何紅年責編 『實用繁簡體字手冊』 台灣商務、1999年。

● 陳慎 『簡繁體對照速查字典』 三遠文化、2006年。

● 李傑群、李傑明、高永安、馬駿鷹 『漢語流行口語』 萬人、2009年。

ノリとか分かりやすさとかは色々だけど、繁体字−簡体字をつなぐための教材は、それなりに出ているんだなー、という印象。確かに、ビジネスしてる人にとって死活問題だもんね。

ちなみに研究員Aは、「台湾語・台湾華語の教材情報4 辞書編」でも取り上げた邱質朴編 『大陸和台湾詞語差別詞典』 (南京大學出版社、1990年)を購入。買っただけで満足してあんまり開いていないんだけど、結局これが一番、読んでて楽しそうだった。

今、リンクを貼るために博客を検索したら、似たような本はいっぱい出ているみたい。興味のある方は、渡台された時にチェックしてみてはいかがでしょうか。でも目立たない場所に一棚だけまとまってある、みたいな感じなので、広大な誠品書店では見つけにくいかもしれませぬ…。

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2010年08月21日

「PK」

台湾のウェブや広告やテレビ番組などなどを、日本からネットなどでちらちらと断片的に見るだけでも、よく出くわす表現がいくつかあります。そんな表現の一つが「PK」。

台湾で用いられるこの「PK」という表現ですが、二つのグループや個人が、1対1で対決すること全般を表す際に登場しています。

例えば「PK賽(PK戦)」という言い方がありますが、これをみると「ああサッカーの」と思うかもしれません。でも、この議論や、ブログ「台瘋來了!!」のエントリによると、「PK」はサッカーに由来するというよりは、むしろオンラインゲームの世界でいう「プレイヤーキル (Player Killing) 」(大雑把にいえば、ゲーム中で相手のプレイヤーを倒すこと)に由来している、という話のようです。

いずれにせよ、最近の台湾では、上記のとおり、「二つのグループや個人の、1対1での対決」という契機があるものなら、何でも「PK」と呼ばれます。

試しにGoogle台湾でニュース検索をしてみると、例えばこんな話題が。この中で「PK賽」という表現が出てきます。

蘋果日報「誰説金門無正妹 女PO圖反駁」

蘋果日報の動画だけなのもどうかと思い(!)、一応もうひとつ。



要するに、馬祖の高校生がブログで「金門無正妹!(金門島には美人なんていない)」と書いたところ、反発を呼んで「炎上」してしまい、ブログを閉じる羽目になったという話。「有種舉辦正妹PK賽,看是金門贏,還是馬祖贏!」(金門と馬祖で美人対決をやって、どっちが勝つか見てみようじゃないか!、って感じ?)という声もあったとか。こんな風に、サッカーやゲームとは関係なく、単に二つの勢力(この場合は金門と馬祖)の対決はPKと表現されているわけです。しかし、何もこんな話題のために金門に行って女性にインタビュー取材を重ねなくてもいいような気もしますが(!)。

さらには、「PK専門の投票サイト」なんてものまであります。

yam天空_PK吧!
芸能ネタから政治ネタまで、さまざまな二つの選択肢に対して「選ぶならどっち?」という感じで投票を募集しているサイト。「棒棒堂vs飛輪海」とか、「死刑制度に賛成vs反対」とか。でもここは芸能ネタが多いかも。

愛PK-PK辯論站
こちらも同様なサイトですが、もっと多種多様な話題でPK人気投票をやっていますね。「大學宿舍該不該男女分宿?」とか「Google還是Yahoo較好用?」とか。でもここは、「型男正妹PK」といって、応募があった美男美女(?)の写真を載せて、美男美女と思うか・思わないかの投票を募集するという企画(!)が目玉のようです。うーん、応募する方も投票する方もなんだかすごいな。

というわけで、台湾社会にあふれる「PK」、奥が深いというか際限がないというか、大変な状況になっているかも?!
タグ:台湾 ことば
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2010年08月15日

台湾語・台湾華語の教材情報6 終わってみての雑感編

「台湾語・台湾華語の教材情報」シリーズ。本日は「終わってみての雑感編」。今回のシリーズ執筆のためにリサーチする中で、いろいろと考えたことを書きます。今まで書いた「きっかけ編」「台湾語教材編」「台湾華語教材編」「辞書編」「歴史資料編」などとあわせてご覧ください。

さて、今回台湾語・台湾華語の教材を調べてみて、まず感じたこと。こんなに沢山出てるんだ! 「きっかけ編」でも書いたけど、研究員Aがその昔、台湾語を学んでいた頃、市販の教材なんてほとんど見当たらなかった。繁体字なんて、目もくれられなかった。そもそも台湾という国に、人はほとんど目を向けていなかった。中国語を学んでいた私のような人間ですら、「台湾て…えーと?」みたいな感じだったのだ。

それが、戒厳令が解除され、近場の海外旅行先として人気が高まり、お茶や食べ物に興味が向けられるようになり、あまつさえドラマが日本語字幕で放映され、台湾出身のアイドルに熱心なファンがつくようになり…。いやもう、この現象自体が隔世の感。しかも、それと共に中国語・台湾語への関心も高まっているなんてことがあろうとは!なんというか、私の知っていた台湾とは全く違う台湾がそこにある感じ。まさに新時代到来。そのことがうまく認識できていない自分自身のオババさ加減を思い知りました。がっくし。

で、話はここで終わるかというとそうではない。「歴史資料編」でも紹介したけど、台湾語教材をリサーチしている時に、図書館でいくつか古い資料にめぐりあった。戦前に発行された台湾語教材。調べてみると、他にもぽろぽろあるみたい。あまり気合を入れずに探してもこれだけ出てくるってことは、けっこう出版されてたんだろうなあ。へえ。そう思った時に、はたと気付く。

私は、台湾語・台湾華語ブームは最近の新しい現象だと思っていた。そして、そのことにシンプルに衝撃を受けていた。でも、それは本当のところ、新しい現象ではないんじゃないだろうか。だって、明治〜昭和前半までの時代に、台湾語がこれだけ熱心に学ばれていた時代がある。今のブームは、決して「初めて」のものではないのだ。

植民地期に支配国が被支配国の研究を積極的に行う、というのはよくある現象。実際、台湾研究の蓄積が最も厚いのは日本植民地期ともよく言われる。戦前に発行された様々な台湾語教材を見ていると、確かにちょっと納得。私が見た限られた資料の中でも、確実に研究蓄積は積み重なり、台湾語への理解が深まっていくのが分かったから。

でも、何故これほどに台湾語が研究されたのか? 「序」なんかを見ていて印象的だったのは、警察関係の人が多くコメントを寄せていること。たとえば、1年で台湾語を習得というコンセプトで書かれた 『台湾語之研究』の著者は警察官。そして、序には台北州警察部長が以下のような言葉を寄せている。

台湾――殊に地方等にあって善く意思疎通をはかり、凡ての事情に通じようとするには、如何にしても台湾語を自由に操るのでなければ目的を達し得ない。
熊谷良正 『台湾語之研究』 (台北:台湾日々新報社、1931年)

台湾で働く日本人警察官にとって、現地で暮らす台湾人との意思疎通は必要不可欠。だから台湾語は命綱みたいなものだったに違いない。台湾語を学ぶという動機には、今よりよっぽど切実なものがあったのだ。

でもそうやって台湾語を学び、台湾の人々を理解するのは何故か。かなり早い段階で出版された『新撰実用 日台会話自在』の序で、警視の肩書きを持つ人物が以下のように書いている。

漢民族の旧慣は依然として思想界を横流し、同化の機又た遅々として進まず。畢竟是れ思想交換の用具たる言語の共通なきが為めなり。盖し本島にして既に日本帝国の一部たる以上は、台湾語も亦帝国国語の一種たるに相違なしと雖も、一国民の間に、全く組織を異にせる二個以上の言語の存在するは、国民の恥辱にして、彼の白耳義(ベルギー)の如き小弱国にあらざる以上は、決して忍び得べきものにあらず。故に吾人は常に台湾語が、将来全く日本語の内に吸収し去らるるの日あるべきを期せざるべからざるなり。
川合真永 『新撰実用 日台会話自在』 (台北:台湾語通信研究会、1912年)

一つの国の中に言語が複数あるのは「国民の恥辱」である。だから台湾語は日本語に吸収されなければいけない。そのために、今、台湾語を学ぶ必要がある。って、この論理、なんだか変だと思うのは私だけでしょうか。台湾語をなくすために、台湾語を習得しなければいけない、ってどういうことよ?

もちろん、台湾語教材作成に関わった人のすべてが、こう考えていたわけではないと思う。特に、執筆者には、意思疎通がうまくいってないのを何とかしないと、という使命感にかられている人が多い気がした。でも序を寄せるような「偉いさん」には、上記のような「同化」の論理をちらつかせる人がいる。そして、この二種類の人達はどこかで確実に結びついている。だから、単純に現場は頑張ったけど、上は馬鹿だった、という話にもならない。なんだかややこしい。でも、それが「植民地」というものの構造の一つなんじゃないかと思う。

今の台湾語のブーム。もちろんこの時とはまったく状況が違う。でも「台湾語」と日本の結びつきは、実は古くて、すごく太い。そしてそのことを、人はきれいさっぱり忘れている。書庫に眠るたくさんの台湾語教材たちと今、出版されている台湾語教材。過去に台湾へ向けられた関心と今の台湾ブーム。これらはそれぞれ全く別のものなんだろうか。だとしたら、過去のあの重厚な研究蓄積は、熱い関心は、どこへ行ってしまったんだろう。どうして私は、私達は、そんなことがあったということすら、きれいに忘れているんだろう。なんだか記憶喪失みたい。それって何を意味するんだろう。

答えは当然出ない。でも「台湾」というものに向かいあっていると、どこかで出くわす問い。現代の台湾語・台湾華語への関心の高まりに驚きを覚えたことからスタートして、戻ってきたのがこの問い。奇しくも今日は8月15日。65年前、台湾が「日本」でなくなることが決定的となった日。「おきらく」は「おきらく」なりに、そのことの意味を考えてみたりしている。
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2010年08月14日

台湾語・台湾華語の教材情報5 歴史資料編

「台湾語・台湾華語の教材情報」シリーズ5回目。今回は歴史資料編。台湾語・台湾華語の教材をリサーチする中で研究員Aがめぐりあった明治〜昭和前半の台湾語の教材情報をご紹介。現代日本で台湾語を学ぶには何の役にも立たない情報かもしれないけれど、ぱらぱら眺めてみたらすっごく面白かった。なんでかというと、「語学教育」のメソッドが、過去の日本でどう展開していたかがよく分かる。しかも「台湾語」という過去に研究蓄積がまったくない分野で。台湾に興味があって、語学に興味があって、過去の日本に興味がある研究員Aにとっては、なかなかツボな素材だったのだ。

というわけで、やや好事家的な内容になるけれど、研究員Aが実際に手に取ってみることができた台湾語教材を5冊ほどご紹介。古い日本語、研究員Aは好きなのでそのまま引用してしまったけれど、苦手な方はとばして読んでください。漢字やかなの表記は読みやすいように適宜手を加えました〜。

でも私はもっと普通の台湾語・台湾華語教材の情報が知りたいよー、という方は、「きっかけ編」「台湾語教材編」「台湾華語教材編」「辞書編」などをお読みください。

では、いざ。

1. 川合真永 『新撰実用 日台会話自在』 (台北:台湾語通信研究会、1912年)
ともかく文法を体系的に説明しようとした本。名詞、代名詞、形容詞、動詞…と品詞ごとに解説。その上で、後半は会話集。著者は、「近来時勢の発展に伴ふて、日台語学研究者の数が大に増して来たにつれ随って多数の日台会話書が、種々の名称の下に出版されて居るが、何れも単純なる会話編で、根本的に言語の構成法を説いた書物は一冊もない」と冒頭で嘆いている。だから、きちっとした文法解説書を作りたかったのだと思う。こういう語学を学ぶメソッドが日本でどういう風に発達してきたのか、研究員Aはよく知らない。でもぱらぱら読んだだけでも、筆者がすごく苦労しながら「台湾語」という新しい分野で文法書を作り上げようとしているのはよくわかる。わかるけど…、これって読んで理解できるのかな。「人称代名詞に名詞を附する場合には原則として代名詞と名詞との間に「的」なる助詞を挟まねばなりません」とか。いやまあ、その通りなんだけど、すべて文法がこうやって文章で説明されているのって、現代としては異様じゃないですか。記号を使ったり、図を使ったり、視覚的に教材を工夫してるから。実際、私はこれを読んでて、逆に混乱した。

2. 劉克明 『国語対訳 台語大成』 (台北:新高堂書店、1916年)
ここで言う「国語」は「台湾華語」ではなく、「日本語」。内容は「音調篇」(発音)、「語法篇」(文法)、「会話篇」と大きく三つに分かれている。特に発音のところは力を入れたと著者自身も書いていて、「台湾語の「ム」と国語の「ム」の差異」「台湾語の「ヌ」と国語の「ヌ」の差異」「台湾語の「ン」と国語の「ン」」などという項目が目次には並ぶ。カセットやらCDやら抱き合わせで販売できない時代だもんね。この辺の発音教育は大変だあ。ちなみに「台湾語の「ム」と国語の「ム」の差異」は次のように説明されてます。

台湾語の「ム」は上下の唇を密閉して其の音を鼻腔から漏らして生ずる音(唇的鼻音)ですが、国語の「ム」は一旦右の如く音を鼻腔から出して其のあとに閉ぢた唇を開いて「ウ」の音を発するのですから、台湾語の「ム」と国語の「ム」は違ひます。

…わかりますか? 私はわかんないです…。

3. 岩崎敬太郎 『羅馬字発音式 台湾語典』 (台北:台湾語典発行所、1922年)
すっごくオーソドックスな台湾語入門書。冒頭に、「本書は普通の脳力を有する講習者をして、約80時間に簡易なる台湾語の大体を正則に習得せしむるの目的を以て編纂せり」と書いてある。今風に言えば、「80時間で台湾語をマスター!」って感じ? でも、第一章の「音」(母音・子音)から始まって、2.「調」(声調)、3.「音便及転調その他」(声調変化や語尾の変化)、4.「語法」(簡単な文法」、最後に「単語類集」っていう構成は、今の語学学習書とすごく近い。なんか眺めているうちに、「これならマスターできるかも」と私は思ってしまいましたよ。ところで、この本で特徴的なのは、タイトルにもあるようにローマ字式」の発音表記があること。でも、何しろ縦書きしか存在しない時代の本だから、こんなことになる。

台湾語辞書1.jpg

上が台湾語(漢字にひらがなルビ)、真ん中が日本語訳、下がアルファベット発音表記。正直見にくい。でも、これって出版社が活字にするの、かなり面倒だよね? ううむ。ご苦労がしのばれる。

4. 熊谷良正 『台湾語之研究』 (台北:台湾日々新報社、1931年)
厚い。『中日大辞典』くらいの厚さがある。このぐらいになると、研究の蓄積もたまってきたのかしら。内容も「発音」「音調」「単語集」「語法1〜18」「日常の挨拶」と充実。「本書は母国人及本島人をして約一箇年に彼此の言語を修得せしむる目的を以て編纂致しました」。つまり一年で台湾語がマスターできるように作った教材だってこと。「3」が「80時間」だったのだから、それより厚くなるのは当然か。しかし「語法」(文法)項目は圧倒的な充実ぶりで、ぱらぱら目次を眺めているだけでも勉強になる。中国語は文法というよりも、特徴的な言い回しをたくさん覚えるのが重要、ってとこあるじゃないですか。そういう「言い回し」がたくさん載っている。だから、これ一通りマスターしたら、相当できる人になってるだろうなー、という予感がする。

5. 片岡巌『日台俚諺詳解』(台南:台湾語研究會、1913年)
ことわざ辞典。日台、台日、日本語の順でことわざが並べられている。「辞書編」で紹介した『五カ国語共通のことわざ辞典―日本語・台湾語・英語・中国語・韓国語対照』と違って、軸になっているのは日本語。いつの時代でも、こうやってことわざを集めようという人が現れるっていうのは面白い現象だよな、と思う。あと興味深かったのは、台湾の中でも北部だけ、南部だけで通用する諺がある、と凡例で言及されていること。なるほど。過去の台湾なら、それはありそう。逆に現代はどうなのかな?と変なところが気にかかる。

6. 安倍明義編 『蕃語研究』 (台北:蕃語研究會、1930年)
これは台湾語の本ではない。でも見つけて、衝撃を受けたのでご紹介。これは、原住民語の解説本。取り上げられているのはアミ語、プユマ語、パイワン語、サリセン語、ブヌン語、ヤミ語、クバラン語。そしてそのそれぞれについて、文法、会話、単語の解説がされている。一つ一つはそれほど長くはないが、これだけ並べてあると、当然のことながら本は厚くなる。もうこうなってくると、中身について評価することは不可能。しかし、一つの言葉に16の言語(原住民語+α)が対応する形で並べられている単語集など、見てるだけで圧巻。すごい。

以上5冊。そんなに一生懸命探したわけではないのにこれだけぽろぽろ出てくるってことは、昔はいっぱい台湾語の教材が出ていたんだろうなー、と思わず感慨にふける。それで、ふと思い立って国会図書館の近代デジタルライブラリーで「台湾語」で検索してみたら、教材っぽいものが5冊ほどヒット。「日台」でも4冊ヒット。興味のある方はこっちも見てください。該当の本がすべてPDFで見られます。(ありがとう、国会図書館!)

しかし、現代の台湾ブームのおかげで充実してきた台湾語・台湾華語教材をリサーチし、その過程で過去の台湾語教材も手に取る機会を得た研究員A。なんだか色々と、それはもういろいろと思うところがあった。せっかくなので明日、シリーズ最終回として「終わってみての雑感編」を書きます。しつこいようですがお付き合いください。

関係ないけど、今日とりあげた本のいくつか。閉館間際とは言え、閲覧室で携帯のシャッター音ならしながら写真を撮っていた私を見逃してくださった他の閲覧者の皆さま、ご迷惑をおかけしました。見てないだろうけど、ここで謝ります。もうしません。

台湾辞書3.jpg
posted by 研究員A at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 語学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする