2016年01月22日

2015台灣同志遊行(台湾プライドパレード)

(毎年書いているこのテーマのエントリ、途中まで書いたパレード数日後の段階でいろいろ忙しくなり、先送りしているうちに、さらに忙しくなり、それが重なり、あっという間に2か月以上が経過……。ものすごく間抜けなタイミングではありますが、なんとか書き終えたので、ようやくアップします。)

2015年10月25日、「台灣同志遊行」(台湾プライドパレード、2015 Taiwan LGBT Pride: オフィシャルサイトFacebook)が台北で開催されました。

2003年に始まり、13回目を数えた今回のパレード、参加者は7万8000人だったと発表されています。まったくイメージが湧かないほどの数字ですが、比較になるものはないかと思って都内の人口を調べると、狛江市の人口が約7万9000人、国立市の人口が7万5000人弱のようで、「狛江や国立の全住民がパレードに参加する」というくらいの人数……ってイメージがやっぱり湧くような湧かないような…。とにかく大変な人数です。

今回のエントリは、例年同様、現場に行っていない立場からではありますが、この2015年の台湾プライドパレードについて断片的にご紹介します。なお、過去のパレードについてのエントリ(主なもののみ)は: 2010年の台北のパレード2011年の台北のパレード2012年の台北のパレード2013年の台北のパレード2014年の台北のパレード2011年の高雄のパレード2012年の高雄のパレード


1.テーマ「年齡不設限─解放暗櫃・青春自主 No Age Limit」

今回のテーマは、「年齡不設限─解放暗櫃・青春自主 No Age Limit」。年齢による線引きに伴う排除を批判するものです。公式サイトの文章によると、香港の佔中運動・雨傘革命や、台湾の高校生による「反高中課綱微調運動」(例えばこのニュースを参照:フォーカス台湾「教科書改訂に高校生らが抗議の声 「洗脳反対」」)など、若い世代、特にティーンエイジャーの存在が大きい出来事がみられているにも関わらず、未成年であるというだけで、政治に参加するには未成熟であるとか、十分な判断能力がないとされてしまう実状があるとして、そうした年齢による線引きと排除や、それに伴う多様性の軽視や否定を批判するという意図が、今回のテーマに込められているようです。そしてそのような年齢による線引きが、セクシュアリティに関する規範の適用にも結び付けられていること、それゆえにそうした年齢による線引きから自由に生きることを可能にしていくことの必要性が主張されている――ということかと(誤解があるようでしたらご指摘を! 以下も同様)。

公式サイトの文章、高齢者への言及もあるけど、ここでの議論で主に想定されているのはティーンエイジャーでしょう。法律などで年齢による線引きを行うことは、対象となる未成年者を保護しようという目的のものもあるのでしょうが、同時に未成年者を制約の対象として位置づけ、クローゼットに閉じ込めている面があることを強調し、そこからの解放を訴えています。

参考までに、文章中に出てくるものについて、別途日本語で少しでも説明が読めるものを挙げておきます。2004年に施行された「性別平等教育法」(wikipedia)については、『台湾女性史入門』(人文書院,2008)pp.52-53に「ジェンダー・イクォリティ教育法」として詳しい説明が掲載されています。「玫瑰少年葉永ヤ事件」はこの法律の制定のきっかけになった事件ですが(wikipediaの「葉永ヤ」参照)、昨年蔡依林のライブで葉永ヤについてのドキュメンタリーが上映された件が話題になりました。2010年の台南女中の抗議については、当ブログのエントリ「台南女中の“短パン・アピール”(『GF*BF(女朋友。男朋友)』)」で説明しています。

2.パレードの様子

flickrの公式ページが、やはり一番パレードの雰囲気を伝えてくれます。参加者の広がりと多様性、さまざまなメッセージがカバーされていて、眺めているだけでも飽きません!

3.報道

例年同様、台湾メディアの報道は多々ありますが、日本語で読める記事としては、以下の二つがあります: RTIフォーカス台湾(中央通訊社)
ニュース動画もやはりいろいろあるのですが、とりあえず以下の二つを。公視のニュースと、「聯合報」系のudn新聞台のニュースです。

公視「同志大遊行登場 以行動爭取婚姻平權」


udn tv「同志大遊行登場 繽紛台北街頭」


後者では、参加者の国際的な広がりや、蔡英文の同性婚支持表明などにもふれていますが、どちらもパレードそのものを、同性婚の法制化を求める主張に結び付ける形の報道になっています。同性婚の法制化は確かに重要なのですが、ここ数年、パレードのテーマ自体は(同性婚の法制化が社会的関心を集めるようになるにつれ)それとは違うものが選ばれています。同性婚の話ばかりが注目されることで、見えなくなってしまう問題もあることをふまえて、主催者が同性婚ではないテーマを選択しているのだと予想しますが、メディアの報道はやはり同性婚を主題化した形になりやすいことが、これらの例からも感じられます。

4.著名人

パレードの最後の晚會のステージ、今回は伍易(易桀齊と伍冠諺)、そして溫嵐が登場しました。この記事によると、溫嵐は前日の夜はプロモーションで大陸の延安にいたそうで、夜9時に仕事を終えた後、4時間かけて西安に移動、翌日(=パレード当日)朝のフライトで台北に戻るという大変なスケジュールだったようです。さすが!

パレードに参加はしませんでしたが、(この時点で)総統候補であった蔡英文が、上で紹介したudnのニュースでもふれられているように、同性婚の支持を表明しています(動画:Youtube「〔我是蔡英文,我支持婚姻平權〕」)。民進党はパレードのタイミングにあわせて、蔡英文の選挙本部の建物をレインボーカラーで照らしたり(Youtube「婚姻平權主題燈光 @ 蔡英文競選總部」)、同性カップルの姿を描いた動画を公開したりしています(Youtube「生而平權 點亮台灣」)。こうした動きは、つい最近発表された福永玄弥「「蔡英文は同性婚を支持します」―― LGBT政治からみる台湾総統選挙」で指摘されている、台湾の政治家が「LGBTフレンドリー」さを表明することの微妙さをふまえて慎重に考えるべきものではあるし、LGBTをめぐる諸課題のうち同性婚という一側面ばかりが注目されているという懸念もあります。とはいえ、政治家の支持発言もこれまでは市長クラスまでが中心だったことを考えると、総統候補者が明言するということ自体は、(蔡英文個人の発言としては新味のないものだとしても)やはり小さくない意味があるようにも感じます。少なくとも同性婚に関しては、台湾社会において公共的な課題としての位置を得ていることが表れているのは確かでしょう。

またこれとは別に印象的だったのは、アーロン(炎亞綸、AARON)の件でした。同性婚法制化に反対する団体の主張に対して、Facebookで厳しく批判するポストをしたのです。彼に対しては多くの「いいね!」がなされ、報道もされたのですが(レコードチャイナ元記事[自由時報])、特にもともと積極的にLGBTフレンドリーな発言をしていたわけではない(気がします)、かつメジャーな芸能人である彼が、こうした発言を強いトーンで行ったことは、単なるLGBTフレンドリーさのアピールにとどまらないものを感じさせ、個人的には印象に残りました。同性婚への支持を表明する芸能人は少なくありませんが、バックラッシュの主張をあえて取り上げて直接批判するというのは、このレベルのメジャーな人物では珍しいように思われ、同性婚の議論限定かもしれないとはいえ、問題意識の裾野の広がりを示す例だと思います。アーロンは日本でも積極的に活動していますが、日本の活動からも彼のこうした面が垣間見えるといいのにと思ったり。


今回もまたネットを通じての情報整理に終始しましたが、それだけでも、同性婚が公共的な課題として位置を得ており社会的な関心を集めていること、同時にそれゆえに、同性婚以外の面が注目されにくい状況にもなっていること、この両方が見えてくるように思います。8万人近くの人が参加する巨大なイベントとなったパレードは、そうした状況を前提とした上で、「多様であること」をさまざまな形で表現しようと模索しているようにも感じました。

無論、この印象はネットを介してのものにすぎず、実際に現場から見た時はまた違う点もたくさんあるのでしょうが、少なくともイベントとしての盛り上がりだけにとどまらない面が多々あることには、注意しておきたいと思います。

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posted by 研究員B at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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