2014年05月31日

台南女中の“短パン・アピール”

台南女中の“短パン・アピール”(『GF*BF(女朋友。男朋友)』)

台湾映画『GF*BF(女朋友。男朋友)』日本公式サイト)の日本公開が迫ってきたので、小ネタをひとつ、まとめておこうと思います。昨年のアジアンクィア映画祭での上映の後ぐらいに、twitterでつぶやいてもいるのですが、時間も経ったので改めて。

で、何かというと、映画冒頭の部分の、女子学生たちが制服のスカート強制拒否を示すため、一斉に脱ぎ捨てるシーンについてです。実はあのシーンは、2010年に台南女中(台南女子高級中學:日本統治期からの歴史を持つ有名校の高校)で実際に行われたこと(式典中に一斉に脱ぎ捨てて空に投げる)をふまえたものです。『GF*BF』の日本公式サイトのTRIVIAのページに、概略が以下のようにまとめてあります。

“短パン履きたい”

冒頭で忠良の双子の娘たちが先導する“短パン・アピール”。2010年3月15日、同様の抗議行動が台南女子高級中学(高校)で実際に起きている。女子高生2,000人近くが朝礼中の校庭で一斉に長ズボンを脱ぎ、下に履いていた短パン姿になった。新しく赴任した教官が制服指導を強化し、「短パンは体育の時間だけ」「ジャージの上着ファスナーは制服の第二ボタンの位置まで上げる」などとしたことへの反発からだったという。抗議の結果、学校側は短パン着用を認め、制服規定を見直すことを約束した。


もう4年前のニュースですが、このことを報道したニュース映像がいくつかYoutubeに残っているので、そのうちの一つを貼りつけておきます。

中國時報「台南女中脫褲爭權益 校方:穿短褲也行」


上に引用した概略に「教官」とありますが、台湾の高校には「軍訓教官」(wikipedia)という人が配属されています。主に生活指導を担当し、通常の教員ではなく現役軍人がなるポストです。『あの頃、君を追いかけた』など、台湾の学園ものの映画やドラマでこの教官がたびたび登場するのを観ている方も多いと思います。『GF*BF』では女性教官でしたが、この台南女中のときは男性教官だったようです。

新たに着任したこの教官が、短パン禁止など服装の指導の厳格化を進めたことに対して、学生たちは不満のメッセージを表明していたようですが、その教官が受け入れなかったので、こうした抗議行動に出たようです(つまり、単に短パンがいいというよりは、説得的な理由があるとは思えない規定を、上から有無をいわせない形で導入したこと、そして不満の声に耳を傾けなかったことが反発を呼んだということのようです)。それに先立って、抗議の意思を表明する「南女短褲幫官方網站」というサイトを学生たちが立ち上げたり、学生たちの間で携帯電話のショートメッセージで朝礼での実行について情報が共有されたりしていたようで、そうした経過を経て、こういう行動に至ったという次第です。

「南女短褲幫官方網站」に掲載されていた内容は、「315南女學運」というサイトで今でも見ることができます。上のニュース映像でも出てきますが、周杰倫の「說好的幸福呢」(Youtube)の替え歌で、「說好的短褲呢?」という詞が作られていて、その歌詞がトイレに貼られたりしたいう話があります。その歌詞はこのページに出ていますが、一部引用するとこんな感じです: 「怎麼了 光明他 說好的 短褲呢/你來了 南女就 全部都 改變了/又不是穿著自己的便服跑去合作社/為什麼穿南女短褲的我要自律訓練呢」。また、さらに「短褲」を「自由」にした、「說好的自由呢?」という言葉は、このサイトでのアピールのキーワードとして使われています。例えばこのページ

長ズボンを脱ぎ捨てるという行動は目を引くものですが、いろいろ見ていくと、単に目を引く行動があったというだけにとどまらない、学生たちの異議申し立ての主張の力強さが感じられます。それこそ、この春のひまわり学生運動にも通じるような。実際、このときの台南女中の学生たちは、2014年にはちょうど大学生になっているくらいですし。

なお、実は2008年ごろから、既に台北の北一女(台北市立第一女子高級中學)などで学生たちから同様の主張が提起されていました。2009年時点の経過は、日本語で整理しているページがあるので、そちらをご参照ください:
中国女性・ジェンダーニュース+「台湾で女子生徒に対するスカート強制が問題に」

この事件は、映画『GF*BF』の本筋と直接かかわる程度は決して大きくないけど(といっていいのか)、こうした背景や精神についてイメージを持っていると、一層興味深く観ることができる……かも???

最後に、「南女短褲幫官方網站」に載っていた画像を貼り付けておきます。たぶん、当時校内に掲示されたものかと: 「自由南女:南女,由我們來定義」。

ziyounannu2010.jpg


【2014.6.1夜 追記】

既に『GF*BF』をご覧になった方は、女子高生たちが朝礼のときに脱ぎ捨てたのはスカートだったのでは?と思ったかもしれません。しかし、実際に女子高生たちが脱ぎ捨てたのは、上記のとおり長ズボンでした。台南女中では短パンを認めず長ズボン着用が強制されたことへの反発として、長ズボンを脱いで投げ捨てたのです。しかし、上でも少し書いていますが、同時期に北一女などでは「スカートの強制」に対する反発の動きがありました。そして強制される服装は異なりますが、女子高生への服装強制への批判という意味では共通しています(「短パンはダメだから長ズボンを」と「短パンでの登下校はダメだからスカートを」の両方の強制が出てくるところに、ジェンダー規範のアドホックさや理不尽さがまさに露見しているわけですが)。

『GF*BF』では、(北一女などのような)スカートの強制に対して、(台南女中のような)一斉に脱いで投げ捨てるという抗議行動がなされた、という風に、二つを組み合わせるような形で脚色されて描かれています。実際、映画での女子高は台北にある設定になっていて、でも制服のスクールカラーは(北一女の緑色とは異なり)台南女中のスクールカラーを想起させる水色になっているあたりも、やはり二つを組み合わせていることがうかがえます。

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posted by 研究員B at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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